青空の下、サルスベリの花が咲いている

梵恵

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二十四節気 七十二侯で感じる季節

二十四節気 七十二候で感じる季節~腐草為螢、土潤溽暑、大雨時行~

草むらの中にミニヒマワリが2輪咲いている

 夏といえば暑いのは当たり前。わかっていても「暑いものは暑い」時期ですね。梅雨前の初夏、沖縄では「うりずん」と呼ばれる爽やかな時期を除いて、日本の夏は湿気祭りと言っても過言ではないジメジメべたべたが特徴であり、待ち望んではいたものの、来てみればグッタリすることもある。明るい季節に僅かなジレンマが切ないところでもあります。
 その僅かな切なさは「腐草為螢(ふそうほたるとなる)」「土潤溽暑(つちうるおいてあつし)」「大雨時行(たいうときにゆく)」の三候にも表れています。「腐」「潤」「大雨」と、どの候にも水っぽさがまとわりついている感じですね。
 腐草為螢と言っても、もちろん腐った草が蛍になったりはしませんが、水を含んだ草が夏の暑さに蒸されて程よく腐り、土へと還っていく頃、水辺では仄かに、しかしハッキリとした夏ならではの命の光がともりだす。この生成と消滅のコントラストは、なかなかに強いインパクトを持っています。
 腐った草が土に還る。それは栄養豊かで、水分も適度な腐葉土ができあがることに、ほかなりません。大地そのものが栄養的にも水分的にも潤うと同時に、発酵が続いて物理的な熱を帯び、土中の水分が大気へと蒸発して、更なる蒸し暑さを呼ぶのです。
 その上で時々、大雨がザーッと降りだす状況。昨今ではゲリラ豪雨も多いですが、昔ながらの雷を伴う夕立もあって、今昔の風情を漂わせてくれます。
 それにつけても、湿気ですよね。そうして、晴れれば晴れたで襲いくる熱波。この時期の問題は、この二つが不規則かつ交互に影響してくることにあります。湿気は重たいので、体の気血水を下に引っ張って、むくみやだるさを引き起こします。一方、暑くなれば温まった気や血が勢いをつけて巡るようになり、血行を著しく良くし過ぎて、めまいや、時に出血までが現れるようになります。
 仕事、勉強、遊び。何をするにつけても、日によって、時間によって、環境によって、どこに血や水分が集まっているかが大きく違ってくるので、同じペースで毎日を暮らすのが非常に難しいわけですね。となると、一番大事になるのは「的確な状況把握」。自分の状態、周囲の状態。浮かれて楽しみたい季節に「気をつけろ」とは難しいことを、とお思いかもしれませんが、臨機応変に楽しむ、これぞ夏の醍醐味の一つなのかもしれません。
 季節の持つ「気」に目を向ければ、「考える」「思う」「努力する」といった積み重ね系の作業に向いている時期でもあります。意外かもしれませんが、水分と熱で枯れ葉が腐葉土に変わるような「積み重ねることでの熟成」が期待できる時だからです。集中しすぎれば疲れすぎ、だらけて何もしなければ楽だけれど何も進まずなわけで、こちらも臨機応変が望まれるところです。
 何より、私たち自身が腐ってしまわないように考えることが一番ですよね。大いなる暑さは私たちに、はしゃぐチャンス、休むチャンス、学ぶチャンスに遊ぶチャンスと、短い期間に大量のきっかけを与えてくれるのです。切り替えを上手にしていくことで、目いっぱい楽しみながら、湿気と暑さを乗り越えていきたいものです。

しっぽと、顔と足の一部が茶トラの白いネコが、ねそべった体勢から首を上げこちらを見ている