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【中医学】
"春の養生"をおしえてください!
"花粉症"、"五行学説からくる風と肝のお話"

あつきあつき「クシュン、クシュン!」

梵梵「どうしましたか?」

あつき「花粉症で、くしゃみが止まらないんです…食事や日々の過ごし方で楽になる方法ってあるんでしょうか?」

梵「そうですね、花粉症と言えば、今では春の代名詞ですね。春という括りは「立春」(2月上旬)から「立夏」(5月上旬)までですが、現実的には1ヶ月ほど遅れて季節が動きます。とはいえ、現在は春も大分終わりの方となり、既に出てしまっている症状については、薬を使わずに対処するのは難しいと思いますが、症状を軽くするためにできることはあります」

あつき「教えてください!!」

梵「花粉症には、いくつか種類というか、どこに症状が出やすいかという傾向があると思います。一番多いであろう、とにかく症状が鼻に集中して困る!という方の場合、チョコレート、ココア、チーズ、魚卵類などを避けた方が良いと言われています」

梵「もう少し下の方、喉や気管支の方に症状が出やすい方は、もち米、唐辛子、ワサビ、カニなどを避けた方が良いとされ、特に目がかゆい、赤くなる、ヒリヒリするといった形で症状が出やすい方は、先に挙げた食品は全て、避けるべきものとなります」

梵「また、あまり甘いものも症状を悪化させる要因になるので、洋菓子、和菓子、黒砂糖、はちみつなど、平素であれば問題ない、あるいは体に良いとされるものも、極力口にしない方が無難です」

梵「花粉症は、粘膜の充血が症状のかなりの割合を占めますから、それを助長させて症状を悪化させるようなものは避けた方が良い、ということなんですね。あとは、一般的にもよく言われますが、生活リズムを整えたり、なるべく花粉に接触しないようにしたりすることも、効果はあります」

梵「春に旬の食べ物は、春に必要な要素が入っている物が多いですし、何より新鮮であるほど栄養価も高いですから、そちらを積極的に食べるのは、おすすめですよ。ただし、体力がある方は影響が少なく、体力がない方はテキメンに影響が出るという差はありますが…」

あつき「体力がある方が影響が少ないんですか?」

梵「まず漢方でいう『体力』というのは"正気"の量のことです。人間の体は"正気"という、普段私たちが使っている"元気"みたいな意味合いのエネルギーに満ちていて、これが充実していると"体力がある"ことになり、外部からの"邪気"、ばい菌などを含む悪いものが入り込みにくくなります。"正気"が不足していると"体力不足"となり、様々なものに入られやすいことになります。」

あつき「漢方での"体力"というものは、"力持ち"みたいなものとは違うということですね(苦笑)」

梵「はい。そして、これは"邪気"のような悪いものだけでなく、良いものに対しても同じで、中身がみっちり詰まっている場合、外から良いものを入れても、そこまで大きく影響が出ないんですね。なので、体力がある方が影響が少ない、ということになります」

あつき「では漢方のお医者さんは、"正気"を見てお薬を選んでるってことなんでしょうか?」

梵「そうですね、中医学や漢方薬を根本から理解されているお医者さんは、きちんと体力まで見分けて処方してくださいます。ただ、一般的な病院などでは"症状がこれ"というと"それならコレ"という具合に、体力関係なく薬を出す仕組みが普通である場合も、結構あります。しかも、本来は頓服で使うべき薬を2週間続けて出してしまうなど、逆効果になってしまう飲み方を勧められるケースもあるので、注意が必要なこともあります。それほど、西洋医学、漢方学、中医学には違いがあるんですね」

あつき「医師からポピュラーな漢方(葛根湯とか小青竜湯とか)をある程度長期で処方されることもあるんですが、服用する量や、医師、薬剤師の話を聞いて服用すれば大丈夫でしょうか」

梵「漢方薬であっても、全ての人に同じ薬が合うというわけではないので、調子が悪いと感じるようならお医者さんに相談したほうがいいかもしれませんね」

梵「また、過ごし方について考える前に、春がどういう季節で、私たちにどういう影響を与えているのかを考えることが大切です。陽気がぐんぐんと増えていく春の季節は、舞い上がり吹き上がる勢いある「風」が、私たちの体にも大きく影響します。また、この季節は五臓でいうと「肝」が該当するので、自然と「肝」の負担が大きくなります」

梵「その特徴から、春先には気持ちが勝手に盛り上がって、わーっと浮足立ちやすくなります。昔、裸にトレンチコート1枚の変態がよく出没していたのは、「風」の影響を誤って体現していたという理由からです。この「風」の力は"和やかに""伸びやかに""締め付けることなく"過ごすために使えると最適ですが、一方では私たちの体の中で血や気をどんどん頭に上げてしまうため「怒」の感情を呼び起こしやすくなります」

あつき「春は『怒りやすく』なるということですかね?」

梵「そうです、春は浮かれたり怒ったりしやすい時期、ということです」

梵「ですので、そこを踏まえて気持ちを大きく、ゆるく持って過ごせると、花粉症をはじめとした様々な身体的な不具合も起きづらくなるのですが、ちょうど期末期首が重なるような時期でもあって、普段よりキリキリと神経の尖っている方も多いでしょう。伸びやかにしたい自分を、自分でギュッと縛りつけないように注意できれば、立派な養生の一つになります」

梵「手軽に使えるのは菊花ですね。食材として使うと少々手間かもしれませんが、近頃では菊花茶として、お湯を入れれば飲める薬茶が売られています。こちらは、イライラや目の充血などに効果があります。また"肝"を養うには、ほうれん草など血を作るとされるものが良いのですが、これもヨモギの葉をお茶として飲むことで、手軽に食養として使うことができます。ただでさえ多忙でイライラしている時に、食材を調理して食べなくちゃ!と思うことがストレスにならないよう、是非活用してください。髪の毛を結ばない、きつい服を着ないだけでも心身には効果的です」

あつき「最初に出た"花粉"以外で、この時期、体で気をつけることはありますか?」

梵「PM2.5や黄砂も含め、ゴミ、ホコリ、チリなどが風によって拡散され、私たちの体も防御力が落ちる時期です。やることが多い時期ではありますが、あまり無理をしないでいられれば、それに越したことはありません。また、急に暖かくなるので水分は摂取していただきたいのですが、あまりガブガブ飲むと、鼻水の出やすい花粉症が悪化したり、体内で巡りが悪くなってダルくなったりしますので、適量を保ちつつ、軽くウォーキングなども挟んでいただけると尚、必要以上に心身が苦しくならずに済むはずです」

あつき「水分は多く摂ると良いって言われてた気がしたんですが、違うんですね。花粉の鼻水はサラサラしてると言われますけど、私は粘度が高いんです。こういうのも水の影響ですか?」

梵「粘度が高くて黄色っぽい場合、そこには"熱"の影響があります。炎症が強かったり、体内にこもっている熱量が多かったりすると、鼻水にその影響が出てきてしまうのです。黄色くはなく白濁していて粘度が高い場合、水分代謝が悪いことを示します」

あつき「私の場合は、白濁していて粘度が高いんですが、その場合は、水分代謝が悪くて、摂取しすぎということなんですかね?軽くウォーキング以外になにか出来ることありますか?」

梵「現時点で水分を摂りすぎというよりも、過去に体内をうまく巡らなかった水分が、痰として蓄積されているということです。この時期であれば、旬の春菊を多めに召し上がることで"肝"の養生と痰取りが一石二鳥でできますよ」

あつき「過去の (体内をうまく巡らなかった)水分までもが影響するのですね!勉強になりました」

梵「巡り巡って全てが動く、中医学らしい観点ですよね。また、これは春に限ったことではないのですが、体調が悪いと、つい"食べて体力をつけなくちゃ"という気持ちになること、ありますよね。胃腸が弱っている時に沢山食べると、更に胃腸を弱らせる原因になり逆効果。いくら忙しくても、休む時には休むしかないこと、覚えておいてくださいね」

あつき「ありがとうございました」

まとめ

春の養生
【花粉症】
症状が鼻に集中して困るという方:チョコレート、ココア、チーズ、魚卵類などを避ける 喉や気管支の方に症状が出やすい方:もち米、唐辛子、ワサビ、カニなどを避ける
目がかゆい、赤くなる、ヒリヒリするといった形で症状が出やすい方:上記2項目に書かれている食品すべてを避ける

※甘いものも症状を悪化させる要因になるので、洋菓子、和菓子、黒砂糖、はちみつなど、平素であれば問題ない、あるいは体に良いとされるものも、極力口にしない方が無難
 生活リズムを整えて、花粉に接触しないようにする。
 春の旬の食べ物を積極的に食べる。

【「風」と「肝」】
春は、五行の「風」、五臓の「肝」に影響が出やすい。
浮かれたり怒ったりしやすい時期。
髪の毛を結ばない、きつい服を着ない。