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【中医学】立春からの食養生

あつきあつき「いよいよ立春も近いですね」

梵「そうですね、あと半月ちょっとですか。時の経つのは早いものです」

あつき「今時分が一番寒いので、ついつい引きこもりがちですが、立春を過ぎれば気分も明るくなりそうです」

梵「そこまでは、体を冷やさない食養生で。春先以降は徐々に、開いていく体をサポートする食養生に移行ですね」

あつき「春になると、体が開くんですか?」

梵「寒い時期を『閉蔵』の季節と呼ぶんです。寒さで弱らないように、全てがキュッと締まって固くなり、体力気力を本能的に温存します」

梵「春になって陽気が増え始め、気温が上がると毛穴が開いてきますし、筋肉や内臓もほぐれて緩んでいきます。気持ちが外に向いていくように、体も外の世界にリンクして動き始めるんですよ」

あつき「なるほど。それでは、まだ続く冬を乗り切る食養生と、春先からの食養生、両方教えていただいても大丈夫ですか?」

梵「もちろんです。まず、暖かくなる前は温めながら寒さを飛ばすのが一番なので、コンスタントに生のショウガとニンニクを様々な料理に混ぜ込んで、継続的に邪気を飛ばしつつ、冷えないように対応するのが簡単な方法です」

梵「どちらも一度に大量に食べるのは逆効果なので、少しずつがいいです」

梵「寒い時期は牡蠣が旬ですが、これがまた根底の生命力アップに効きます。雑菌による食あたりを考慮すると、生食よりは加熱食がお勧め。鍋やフライが有名かと思いますが、私の場合は気が向いたらお味噌汁の具にする、というやり方で普段のご飯にも反映させています」

あつき「お味噌汁に入れちゃうんですか!なんだかもったいない気もします」

梵「牡蠣の出汁が出て美味しいですよ。きちんと効果の出る量を食べられるのも嬉しいですし。でも、牡蠣はどうやっても苦手、という方もいらっしゃるでしょうね。その時は黒ゴマです」

あつき「黒ゴマでいいんですか?!」

梵「はい、一度に大量に食べるのではなく、汁物、炒め物、煮物などに度々入れて、これも継続的に使えるといいですね」

梵「そして、春です。まだまだ冷える中でも、体内に溜まっていた余分なものを外に出したい、そんな体の欲求はどんどん強まります」

梵「そこで、温めながら発散もできる優れものとしてお勧めなのが、スパイス類です。本格的なカレーだと、何種類も入ってますよね」

あつき「それ、聞いたことがあります。春先は刺激的なものを食べて、体の中身から動かしていこう、汗を出していこう、みたいな話だったと思います」

梵「アーユルヴェーダなどでも、春先は仰るような養生法を勧めていると思います。ヨガやジョギングで体を動かして汗をかく、お風呂にじっくり入って汗をかくなど、巡りが良くなっているかどうかの判断に、汗のキーワードがよく出て来ますが、ここ、要注意なんです」

あつき「汗を目安にすることに注意が必要なんですか?」

梵「はい。実際、じんわり汗をかく程度まで気血が動いているかどうかは大事なところなのですが、一般的にはどうしても、汗はかけばかくほど健康的みたいなイメージ、ありませんか?」

あつき「そりゃもう、ダラダラ汗をかけば巡りも良くなるし、出た分の水分がなくなって体重も減るし。もちろん、汗をかいたら水分補給はするので、汗をかいた分の代謝が上がって、次に脂肪が減って、という方向で、スッキリしていけると思っています。なかなか続けられないので、なかなかスッキリしないんですが」

梵「いえ、その方法なら、なかなか続かない方が健康的です。何故なら、中医学で考える時は、汗=水分が減る、代謝が上がる時に出る、ではないからです」

梵「物が動く時には、必ず『気』がくっついている。それが中国古代哲学での考え方です。汗がたくさん出て行くなら、それに伴って『気』もドンドン出て行ってしまいます。けれど通常、汗をかいて補給するのは水分だけ。これを繰り返すと『気』ばかりが減っていくことになります。」

梵「この世界、全ては気でできていて、バランスがいいと健康的になれるのが、中医学での見方でしたよね」

あつき「本当だ。そうやって考えると、汗だけダラダラかいても健康にはならないですね」

梵「そうなんです。そして激しく失われる『気』を補うのは、そんなに楽ではありません。結果、バランスが崩れて感冒、俗に言う風邪(かぜ)をひきやすくなるんです。みんな、かいた汗が冷えて風邪を引いたと思いがちですが、体内に気が満ちている状態であれば、実はそんな簡単に感冒にかからないで済むこともあるのです」

あつき「それは考えたことのない風邪の理由ですね」

梵「一つの結果に対して、あらゆる原因を想定してから、心身の状態を見て対策を絞っていくのが中医学ですから、これが王道とか、その展開しかないとか、それだけと思い込むのも危険ですが、そういう見方もあるということです」

梵「なので、ダラダラではなく、ジンワリ汗をかく程度を日々継続して、冬に溜めたものを少しずつ解毒していく、そんな感じが体に負担も少なく、春を謳歌するにふさわしい方法になるということです」

梵「もちろん、時に羽目をはずすのは全然大丈夫です。トータルで見てバランスが取れているかどうか、何より自分が気持ちよく過ごせているかどうかが、一番大事なことだけ忘れないでください」

あつき「わかりました、ありがとうございます!」

まとめ

  • 冬場は生姜とニンニクをこまめに使う
  • 春先はスパイスを適度に使い、体も軽く動かす
  • 汗は、かきすぎると病気を呼び込むので要注意