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【中医学】初夏の養生

梵梵「ずいぶんと本格的に暖かくなってきましたね」

あつきあつき「あ、先生。夜になっても冷え込まないのは、素敵ですね」

梵「そうですね。今年は5月5日の子どもの日と、5月6日の立夏が分かれてきます が、暦の上ではそろそろ夏の始まりですからね。」

あつき「子どもの日は端午の節句に当たると思いますが、必ずしも立夏とかぶる わけではないんですね」

梵「端午の節句は5が二つ揃わないと、奇数の強さを発揮できませんが、立夏の節気は陽気陰気の流れでみるので、必ずしも同じとは限りません。しかも今年は、元号が変わるという大きな節目も5月1日に迎えていて、なかなかテンヤワンヤな状況が続きそうです。それにしても、なんで端午っていうのか、考えたことはありますか?」

あつき「いや、言われてみるとないですね。テンヤワンヤという言葉に昭和を感じて、気を取られていることもありますが」

梵「平成も終わりの今、昭和をプレイバックですね。それはさておき、端午というのは「午の端」と書きますね。午というのは方角でいうと南、時間でいうと朝の11時頃から昼の13時頃。つまり陽気が一番強い季節・方角・時間の象徴なんです。その端っこに到達してしまったのだから、これからは陽気MAXに向かう一方だよ、というのが端午の意味です。もっとも、これはそよぎ的解釈で、実際には諸説あります」

梵「そして、様々な事柄に諸説あるように、私たちの体も一人一人異なる体質で生きているわけですが、季節の影響を抜きにしては語れないわけで、前回の春分に引き続き、養生的なお話を交えていきたいと思います」

あつき「最も暑い季節にさしかかった今こその養生ですね。ぜひ教えてください」

梵「はい。まず、暑くなると血行が良くなるので、血液が不足した状態のままだと動悸がひどくなります。そもそも階段を上がると動悸がするというタイプの人は、この時期の急な暑さで一層動悸が激しくなり、そのまま放置すると重篤な症状が出ることがあるので、注意が必要です」

梵「この重篤な症状の大本は血液不足に由来することが多いので、まずは水分を摂ること。スポーツドリンクなど浸透圧の高いもの、すぐに体内に吸収されるものの方が、ミネラウォーターよりお勧めです。お茶なら唯一、麦茶だけがお勧めです」

梵「そして、水分だけを入れ続けると今度は血が薄くなりやすいので、ちゃんと血を増やす食べ物を食べること。有名なところでレバー、ホウレンソウなどは間違いないですし、カツオヤマグロなど赤身の多い魚も効果はあります」

梵「特に動悸がする人でなくても、水分不足を極端に恐れて水分を摂りすぎると、血が薄まった挙句、亡くなってしまうことすらあり得ます。いつも言うことですが、過ぎたるは及ばざるが如し。いい塩梅が良いのですね。この時期は本当に「塩」や「梅」が役に立つことも多いですし」

あつき「え、言い回しとしてではなく、本物の塩と梅ですか?」

梵「そうです。水ばかり飲んで具合が悪くなった時は、塩を少し足すことで一時的に血液の濃度を改善できます。なので、夏場は「塩飴」なんて売っていますよね。また梅は、あの酸っぱさが毛穴をキュッと引き締めてくれるので、なんだか無駄に汗がダラダラ流れてくるなぁ、なんて時に効果的。その無駄な分の汗を止めてくれます。もちろん、強制的な薬とは違うので、必要な分はちゃんと出ますし」

梵「ただ、一時しのぎで何とかなった後は、必ずきちんと体を休める、あるいは労わないと、最終的に健康を維持できなくなるので要注意です。この時期は、とにかく血液ドロドロが一番怖いと言っても過言ではないので」

あつき「そうですね。外に出て暑いと思っていても、建物に入るとそこまで喉が渇いていないと感じて何も飲まなかったり、まだまだ春の最中だから大丈夫だろう、さわやかな季節は病気に襲われない、なんて油断してしまうことも度々あるように思います」

梵「基本的に抵抗力が落ちていれば、外から邪気がガンガン入ってきますから油断は大敵です。そして、この時期に抵抗力を落とさない方策が、まずは血液の巡りを良くすること、血液量が不足なら増やすことなんです。更に、その対策をすることで、精神的に不安定な人にも、嬉しい効果が出やすくなるんです」

あつき「なんと。それは新しいお話ですね」

梵「そうかもしれませんね。実は血液が減ると、体が勝手に「血が減ったぞ!まずいぞ!」という危険信号を発するんです。通常、突然活動的になる春先になりやすい状態なのですが、突然暑さが増して汗が増える時期も、同様に血液が減りやすく、そうなると理由もわからずにイライラしてくるのです」

梵「これに、暑さが増してくると今度は暑さで「心(心臓を含む血流機能・精神機能)」がやられて、直接的に精神状態が悪くなることもあるのです。不安になったり、イライラしたりの原因がわからないために、余計にイライラが増す悪いスパイラルに入りやすいんです。せっかくの夏なのに、それはつまらないですよね」

あつき「季節が変わるだけで、そんなにいろいろと影響が出るんですね。正直、たまったもんじゃないです」

梵「ですよね。なので、暑すぎる時は休憩するなどの身体的な養生も含めて、多忙な中にも自分をいたわること、忘れないようにしてくださいね」

あつき「はい、気をつけたいと思います!」

まとめ

  • 夏場は水分不足だけでなく、血液不足に注意する
  • 水分だけでなく、塩分や血液になる食物の摂取も忘れない
  • 夏場は身体の状態が精神状態に響きやすいので、無暗に焦らない