食養生 〜わたしたちのイマドキごはん〜

梵恵

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大暑の巻

★☆大暑の巻☆★
 気がつけば梅雨も明け、蒸し暑い日本の夏が全開の時期、到来です。この時期の食養と言えば皆さんもご存知、江戸時代から有名な「土用の丑の日」に「うなぎ」ですよね。
 土用は「土を用いる時期」で、五行でいう土行の気に満ちる時です。五行をエネルギーの循環として覚える時は「木火土金水」の順番で覚えますが、実際の土用は季節の変わり目がやってくる春夏秋冬それぞれの季節の末尾にあるので、年に四回ほどやってきます。
 夏の土用だけが有名になったのは、平賀源内が「夏の疲れには、うなぎを食べて元気ハツラツ」みたいな宣伝をしたからです。そして源内がうなぎを宣伝した理由は、夏場のうなぎは脂っこく感じられて売上が落ちたからだと言われています。
 うなぎは私たちの生命力の源である「腎」を助けてくれますし、とにかく不足しているものを補う作用が高いので、老若男女の夏バテや食欲不振には効果大。源内としても、嘘をついてまで売上をあげようとしたわけではないのですね。
 でも、そこまで消化に良いものでもないところが、実は欠点でもあります。地域によっては「あなご」を食べるところもありますが、栄養的に言えばうなぎの方が上ですし、消化吸収力がガックリ落ちている状態では、こちらも今ひとつ、お勧めできません。
 ここでお勧めしたいのが、タピオカ。
 脾と腎をサポートすることで食欲を増進してくれるのです。しかも、体を温めも冷やしもしないので、温めたり冷やしたりする効果は他の食材で存分に調整可能。タピオカの原料はキャッサバという芋の根っこで、でんぷん質でできています。なので、例えば朝ごはん用の炭水化物としてタピオカを投入し、消化器が準備できたところで昼うなぎとか、軽めの昼&おやつにタピオカで夜うなぎとか、時差組み合わせで使えばバッチリ。
 ただ、タピオカ関係の冷たいものは、お腹を壊す確率が上がるという話も。特にココナツミルクと合わせた場合、食物繊維の豊富さ&冷たさのダブルパンチが、内臓を刺激しすぎてしまうのかもしれません。
 実はココナツも夏に向いている食材で、暑さや喉の乾きを止めてくれる働きがあります。多少身体を温める作用があり、冷房にやられている人ほど適正は高いはずなので、室温近くまで戻してから食べるなど、身体に合った対処で。
 今の時期は、朝と夜くらいしか、まともに頭が回らなくなってくることも多いでしょう。いくら食養で健やかに過ごせているとしても、季節には季節の過ごし方があるのです。夏の過ごし方は基本的に「楽しむ」ことです。嬉しい、楽しいと思うべき季節なので、是非嬉しかったり楽しかったりすることに、積極的であってください。
 暦の上では、8月上旬にもう立秋が来てしまいます。以前お話したように、それが現実の現象となって降りてくるまでには、二週間から一ヶ月のタイムラグが見込まれますが、要は、夏は短いということ。
 短いと言えば「命短し、恋せよ乙女」なんていう言葉も有名ですね。ある歌の歌詞なのですが、なんと作られたのは1914年。大正4年のことだったのです。若者はモボ(モダンボーイ)やモガ(モダンガール)を目指して、情熱的に西洋文化を取り入れながら、恋をしていました。
 夏は暑く、だからこそ情熱的に。年齢には関係なく、仕事に、友達に、趣味に、世界に、恋をしながら生きていきましょう。

 (出典:日本中医食養学会編纂「食物性味表」改訂2版)