食養生 〜わたしたちのイマドキごはん〜

梵恵

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処暑の巻

☆★白露の巻☆★
 本格的に「涼しいな」と思えるタイミングの増える時期がやってきました。春の三寒四温とは逆に、三温四寒とも言うべきペースで温度が下がっていく中で、白い露が葉につくことも珍しくなくなっていくのが「白露」期間を経ての変化。
 体の温度を下げなくてはいけない時間帯と、維持しなくてはいけない時間帯とが交互に訪れるようになると、秋の気候の爽やかさに反して、体調を爽やかに保つのは難しくなってきます。ましてや、秋といえば「乾燥」が特徴の時期。ジメジメしていた空気からようやく解放されて、気分的には明るくなりやすいものの、体としては潤すことも自力でやらねばならなくなる分、これまでの時期とは異なる負担が体に増えるのです。
 温度差の増加や乾燥の強化に伴って、これからの時期に増えてくるのが、咳を主体とした感冒。食欲の秋と言われるくらい、湿気による消化機能の衰えは回復してくることが多いものの、湿気がなければないで、私たちの体は困るわけです。思えば贅沢な作りですよね。
 そんな贅沢な私たちの体を、軽く冷やしながらも潤してくれるのは、季節の果実とも言える「梨」です。咳の出やすい状態を改善する上、都合の良いことに二日酔いにも効果があります。
 食べているとなんとなく「これ、中身は水ばっかりで栄養なんてないよね」と思ってしまいがちな梨ですが、そんなことはナシ。確かに、9割がた水分でできていますが、普通に飲料として水分を摂るよりも、効率よく体に吸収されていきます。また、ドリンク剤などにもよく添加されているアスパラギン酸やクエン酸といった疲労回復物質が、天然自然で入っています。飲んだらおしっこが黄色くなっちゃう、なんて心配をすることなく、元気回復の手段として使うことができるのです。意外でしょ?
 とは言え、それほど梨って好きじゃないんです、という方には、百合根やレンコンもお勧めはできるのですが、この時期の「多少冷やしながら潤す」に最適なのは梨だということ、覚えておいていただけると良いと思います。
 秋という季節に推奨される事柄は、気を巡らせて発散すること。夏のジメジメを抜けて軽やかになり、寒く固まってしまう前の今の時期こそ、よく巡らせて不要なものは外に出しておこう、というのが自然の摂理なんですね。
 ですから、スポーツの秋が推奨されるわけです。このまま本格的な冬になれば、体は完全に冬眠モードに入って、一度抱え込んだものは外に出したがらず、溜め込む一方になります。毒素でも脂でも、せめて古いものは一旦外に出してから新しいものを溜め込みたいですよね。
 急にスポーツらしいスポーツをするということではなく、散歩の距離を長くする、軽く筋肉に負荷をかけるなど、じっくりと、けれど確実に不要物が外へと移動する感じに動くのがベスト。体の内側から動かす感じですね。ただ、中医学的に言えば「汗をたっぷりかくだけ」というのもアウト。汗が大量に出ると、体を構成する「気」まで一緒に失われて、逆に感冒にかかりやすくなります。潤すのが必要な時期なので、水分でもいいから出しちゃえ、というのは勇み足というわけです。
 蓄積疲労があるなら、ガッチリ眠る時間もきちんと取りましょうね。

 (出典:日本中医食養学会編纂「食物性味表」改訂2版)