食養生 〜わたしたちのイマドキごはん〜

梵恵

10 20

霜降の巻

★★霜降の巻☆★
 いよいよ、霜が降りようかという時期まで、やってきました。
 朝晩のヒヤッとした空気に、否が応でも秋を感じる日が増えてきたことと思います。 気候変動が続く昨今、昔ほどストレートに暑さ寒さがわかりやすくやってきてくれませんが、それでも季節は着実に、移り変わっていくのですね。
 天高く、馬肥ゆる秋。もちろん肥えるのは馬だけではありません。冬直前に訪れている、実りの最盛期。美味しい旬のものが目白押しの中、気温は下がる一方となれば、当然のように体は栄養を蓄え始めます。
 やだ、お腹周りに栄養なんて貯められても困るし。代謝を上げるためにも、辛いもの食べなくちゃ!あるいは、夜の寒さを吹き飛ばすために、辛いものを!なんて思いますよね。
 間違いではありませんが、日々大量に取り入れ続けると、思った以上のダメージが体に来ます。辛いものは内臓への刺激が強いだけではなく、体内に熱を溜めたり、喉鼻の乾燥を誘発したりと、よろしくない面も同時に持ち合わせているからです。
 更に怖いことに、胃に熱が溜まると食欲は上がってしまいます。胃の活動が活発になりすぎて、まだ入る、もっと消化できると胃が頑張ってしまうために発生する現象ですが、これでは、代謝が上がる以上に摂取カロリーの方が上回ってしまいそうですよね。
 秋に旬の味覚である、さんま、くり、きのこなどと組み合わせて適宜使う分には、味変わりを楽しめて良さそうです。香辛料などはメリハリのある使い方で、少量を生かしていきたいところ。
 そして、今回のお勧め食材は、かぼちゃ。冬至のメイン食材ですが、収穫のピークは夏頃で、貯蔵している間に甘みが増していき、冬に美味しくなるという具合。ハロウィンのおかげで、10月にはオレンジ色のかぼちゃのお化け「ジャック・オ・ランタン」を見かけるようになりましたよね。せっかくなので、お化けの顔を見るだけではなく、ここでも一度、かぼちゃを味わっておきましょう。
 かぼちゃは消化に良い上、中医学的にもお腹に良い効果をもたらし、元気をくれる素晴らしい食材です。この時期であれば、かぼちゃを使った洋菓子・和菓子も出回っているはずですから、多忙な中でも手軽に摂取できること間違い無し。時間と興味があるならば、自力で緑のかぼちゃをつかった「かぼちゃお化け」を作り、かきだした中身でお菓子やお惣菜を作るのも、楽しいかもしれませんね。
 多忙な年末までは、あと少し時間があります。最近は生活スタイルも個人個人でかなり異なるので、一概に「年末だけが多忙」でないことも多いと思いますが、神経を緩められる時は緩めて、きちんと、でも手軽に、体を養う意識を持つことで、うっかりバッタリ倒れちゃう、なんていう不測の事態を避けることができます。
 そして、今の時期に大切なのが、体を動かすこと。今ならまだ、体が固まるまでの寒さに見舞われることは稀です。体全体をストレッチなどで柔らかく保つことを習慣にできれば、冬場の代謝アップにも、怪我防止にも役に立ちます。
 わかっていたけど、やれていない。知っているけど、できていない。そんな方にも運動のラストチャンス。美味しく食べて、楽しく動けるといいですね。

 (出典:日本中医食養学会編纂「食物性味表」改訂2版)