食養生 〜わたしたちのイマドキごはん〜

梵恵

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大雪の巻

★★大雪の巻★★
 小雪の次は大雪。寒さがグッと深まるのが目に見えるような節気ですね。空気も透明感を増して、と言いたいところですが、都会ではその手合の季節感よりも、どこに行っても耳にするようになったクリスマスソングで季節の移り変わりを知ることの方が多いかもしれません。
 そこまでたくさん雨も雪も降らない場所では、乾燥と寒さが一度に深まる時期でもあります。秋の特徴が「乾燥」だった上に、それが癒えないまま今度は寒さが襲撃してきている状況下では、空咳や痰絡みの咳に悩まされる方も増えがちで、電車内などではコホンコホン、ゲホゲホとあちらこちらから喉の悩みが聞こえてきます。マスクによる保湿も非常に効果は高いですが、やはり食養生でも体をサポートしていきたいところ。
 一方で、そろそろ飲み会が立て続けになっていて、お酒の持つ熱による乾燥で体が中から乾いていく、あるいは水分やカロリーを体がさばききれず、体重が増えていく頃合い。お酒で暖を取る方法は、そんな危険性も背中合わせでついてくるのです。もちろん、お酒を嗜まれない方でも、年末で集まる機会が増えれば、カロリー摂取量は増えていくもの。
 冬は「閉蔵」の季節で、各部署が省エネ運転に入る時期なのですから、ドカドカ大量にあれこれ入ってきても「後で何とかしまーす」状態で体内のどこかに蓄積されていってしまうことは必至。それが体内のどこで滞っていくのかで出てくる支障も様々なものになり、春を迎える前に健康から遠ざかってしまう、というのが悪い流れです。
 それを止めるために、以前お勧めした黒胡麻の継続摂取に加えて継続を開始していきたいのが、豆乳。味にクセがあるので苦手な方もいらっしゃるかもしれませんが、鍋の汁に加える、既に味の調整してあるものを飲む等、自分に合った方法を見つけていただければ大丈夫。
 黒胡麻には冬に弱る「腎」をサポートし、私たちの体を潤す作用があります。豆乳は不足しているエネルギーをプラスし、余っているエネルギーは体外に出しやすくしてくれる上、そんなに強力ではありませんが咳を押さえてくれる作用もあります。つまり、潤しながらも巡らせやすくして、少しでも体内で様々なものが停滞するのを防ぐことができるというわけです。
 ただ、この二つの食材は、食材そのもののカロリーも高め。体にいいからという理由で日々大量に摂取すると、それが逆に体の肉としてつき始めてしまう可能性が大きくなります。以前に提案した「三日坊主で週二回は食べる」戦法で、黒胡麻は一食につき大さじ1杯程度、豆乳は一回に100cc~200cc程度で大丈夫。本当に毎日、黒胡麻を三食で大さじ三杯、豆乳を600ccも取り入れていては多すぎです。
 「過ぎたるは及ばざるが如し」というのも、食養生の大事な観点です。わかっちゃいるけどやめられない、なんてことも世の中多く存在していますし、破天荒な食生活がストレス解消につながる時期でもあるので「とにかく節制しましょう」などというイケズなことは言いません。けれど体内に溜まったものが増えるほどに、春になってから排泄していくのが体にとって大変な労苦になってきます。また寒くなってくればストレッチですら億劫になりますが、動かさない部分に余分なものがつくのは自明のお話。
 あまり「まぁいいや」の一言で流しすぎず、体とよく相談して深まる冬に供えましょう。

 (出典:日本中医食養学会編纂「食物性味表」改訂2版)