食養生 〜わたしたちのイマドキごはん〜

梵恵

2 16

雨水の巻

☆★雨水の巻★★
 雪や氷が雨や水になり始める、陽気増長の時期がやってきました。現実には、まだ雪が大分溶け残っている地域も多いはずですが、雨水に当たる二週間が過ぎ去る頃には、それでも春が来たと心底、感じられるようになるでしょう。
 寒い日でも、日中の陽射しの明るさが一段と際立ってくるのが、この時期の特徴です。もちろん、この後は更に明るくなっていくのですが、気温が上がってくると、視野に入るキリッとした明るさの新鮮味よりも、暖かさによる気持ちのホワホワ感が先行してしまうので、「輝き」を純粋に楽しめるのは実はこの時期だけ、とも言えるのです。
 気持ちのホワホワ感は、暖かさによるものだけではありません。物理的に陽気が増えてくることにより、世界の全体がホワホワ感に包まれます。
 陽気自体が暖かさを作り出すものなので、暖かくなるのも結果的には陽気の増加と結びついている話なのですが、それは私たちの体にも確実に影響を及ぼしてきます。
 冬の間はグッと沈み、固まるように集まっていたものが、陽気の力が上がるおかげで体内でも上昇を始めるのです。適度に気が上昇すれば、単なるワクワク・ホワホワ感となり、それが始まりの季節に相応しい機動力となって機能してくれます。
 けれど、極端に気が上がったまま、下がる方がうまくいかないと、頭に溜まった気が滞って頭痛の元になることがあります。また、上る気に伴って血が上ってしまうと、まさに「頭に血がのぼる」状態になって、カッカカッカと腹を立てることになったり、目が充血して真っ赤になったりする減少が起きてきます。
 これを避けるため、私たちが一番にできることは、気持ちを伸びやかに保つこと。切り替えの時期でもあり、多忙な期間に突入する春には、まずまず難しい心構えかもしれませんが、世の草木がすくすくと芽を出し、伸びやかに育とうとする時期に、私たちが社会の都合でキリキリギスギスしているのは、自然の流れに反している状態です。
 イライラしやすいことを念頭に置いて、頻繁に息抜きをはさんだり、これくらいで死にはしないから大丈夫!と心に余裕を持ったり、積極的に世界のホワホワに合わせる方策を取っていきましょう。
 食養生としては引き続き、菜の花を多用しながら、香りのあるものを取り入れていくのが良い頃です。食養生のみならず、香りがする、それだけで体内の気がスッキリと流れやすくなるので、好みの香りであれば、香水でも、お香でも、ほのかに香る程度身につけるだけで、外を歩く時には邪気祓いにも使えます。香らせすぎると逆効果なので、要注意。
 また、この場合の「邪気」は「悪い雰囲気」や「念」と同義なので、中医学的にいう「邪気」、体内に入って病気の原因となるものを弾き返すためには、かぼす、すだち、みかんといった柑橘類を上手に使っていくことも大事です。あまり大量に飲食できるものではないかと思いますが、香りの強いものは少量でも効果を発揮してくれます。なので、少量でも継続して使用していくことが肝心。
 これからの季節は、とにかくイライラすることが体に響き、体の影響でイライラが起きるという悪いループが起きやすくなります。暖かい時間帯には汗が出やすくなる頃合い、寒い時期には、あまり摂らなくなっていた水分も積極的に増やして、輝かしい季節を輝かしく、過ごしていきましょう。

 (出典:日本中医食養学会編纂「食物性味表」改訂2版)