食養生 〜わたしたちのイマドキごはん〜

梵恵

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啓蟄の巻

☆★啓蟄の巻★★
 啓蟄と言えば二十四節気の中でも、かなり有名なものの一つですよね。暖かくなったおかげで、体温が外気温に左右されてしまう虫の類でも這い出てくることが可能になり、人によっては「大迷惑〜」と言いたくなることもありそうな区切り。
 「啓」は「開く」という意味で、「啓く」で「ひらく」とも読みます。「蟄」は「こもる」という意味で、江戸時代には「閉門蟄居」、つまり幕府の味方ではないとみなされるような事件が起きると、お家断絶を言い渡され(閉門)、引きこもって暮らすべし(蟄居)という厳しい刑罰が言い渡されましたが、そんなところでも使われていた字です。
 最近は、特に都市部は空調や暖房がしっかりしているので、冬でも皆さんバンバンお出かけになられてますし、引きこもりの理由は大抵、物理的なところにはないという複雑な世の中になって久しいですが、それでも私たちの体は悠久の歴史に沿って「春」を迎えれば様々な変化を起こすわけです。しかも、陰陽バランスが対等になる春分に向かい、今は着々と陰気が減っていっている最中。
 目に見えない陰気の減少は、陽気な季節の到来として歓迎すべきものであると同時に、中医学でいうところの「陰気」、つまり血を含む水分の減少につながるので、手放しで喜べる現象でもありません。
 前回、特に注目したのは「イライラ」でした。伸びやかな春には、私たちの心身も伸びやかに過ごすのが一番なのですが、古今東西そうは問屋が卸さないトラブルは頻発するものです。話が伝わらずイライラ、ちょっとぶつかってイライラ、定食が目の前で売り切れてイライラ!何の嫌がらせ?なんて思った瞬間から、私たちの体内では上がらなくていい量の気が上半身から頭へと集まり、場合によってはヒステリーとなり、場合によっては妙に浮かれて周囲に気味悪がられることもあるわけです。
 春らしく「陽気に浮かれる程度」以外の浮き上がり方は、なんとしても下げていかないと、いずれ体調不良の原因そのものへと変化していってしまいます。前回は詰まった気で起きるイライラを香りで流す方法を紹介しましたが、今度は浮き上がった気を下げて、地に足のついた状態へ戻すための食材をご紹介。
 ここでの一押しは、豚のレバーと鶏のレバー。食養生では「以臓補臓」、臓を以て臓を補うという考え方があり、春に負担の大きな「肝」を補うためにはレバーが適切だということになるのです。実際、これらの食材には不足する陰気を補って「血」を増やしてくれます。
 積極的にそれらの食材を摂ることで、上がった気に重しをつけて下げていく効果が見込めます。なんだか気持ちがフワフワして困ったな、なんていう日々には、是非これらの食材を少し続けて試してみてくださいね。
 この時期は新しいことに目が行きやすいだけでなく、締めくくったり、新しいことへの準備を始めたりと、バタバタした生活の中で「継続」が難しくなってくる時期でもあります。落ち着いてから食養生を、なんて思っていると、一ヶ月も二ヶ月も何もできないまま、なんていうことになりかねません。
 以前にも言及した通り、週に一度「三日坊主」できれば週に半分程度は食養生できたことになって、それが月に半分程度、二ヶ月なら一ヶ月程度の継続的な食養生につながっていきます。ギュッと短期よりダラダラ長期。伸びやかな春のペースに合わせて、続けていきたいものです。

 (出典:日本中医食養学会編纂「食物性味表」改訂2版)