食養生 〜わたしたちのイマドキごはん〜

梵恵

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春分の巻

☆★春分の巻★★
 春分は、お彼岸の中日ですね。皆さん牡丹餅は召し上がりましたか?
 あんこで包んだ餅米&うるち米団子を、春は牡丹餅、秋はお萩と呼ぶ辺りの日本の風情が素敵ですよね。
 米類・豆類は全般に邪気祓いの力が強いと言われます。その小さな身の内に、大きな草や樹木になるエネルギーを秘めていることから、その生命力が、強い陽気が、邪気を祓うと考えられてきたのです。もちろん、小豆も例に漏れません。
 あの世とこの世の近づく時期に、悪いものが取り憑いてこないよう、生命力が強く邪気祓いにもなる小豆と米類をコラボで食べるという風習は、逆に言えば古来人々がどれほど邪気、ひいては病気や死と極力無縁でありたかったか、その強い願いを表しているものでもあります。
 栄養的に豊かになり、むしろ糖質や炭水化物は健康の敵といったイメージすら一般的になりつつある昨今ですが、中医薬膳の視点から言えば、炭水化物は「気」を作るための大切な要素です。
 世界の全ては「気」から成る。中医学では、これが万物の根本。そして陰気と陽気のバランスの良い状態を「健康」と呼ぶのですから、「気」の摂取を断つというのは合理的ではありません。普段の節制はともかくとして、この時期には縁起担ぎも兼ねて食べておきたいものです。
 ましてや、小豆には体を軽く冷ます作用もあります。お彼岸の頃には、夜もそこまで冷えなくなり、日中の熱が体にこもったままになってしまうケースも出てきます。体は冷やさない方がいいのは間違いありませんが、不要な熱が溜まり始めてしまうのは陰陽バランス崩壊の第一歩。そこで、縁起を担ぎながら余分な熱は飛ばしてくれる牡丹餅の登場。理にかなっていますね。
 この時期は陰気と陽気が半々になり、この後は陽気が増えて万物は一層活発化していく流れなので、陰陽の極端さが少ないという意味では、体調管理しやすい頃合いと言えます。そうは言っても、爽やかな季節に浮かれて陰陽バランスの調整を忘れると、春の邪気にやられて心地よくない時間を過ごす羽目にもなりかねません。
 陰陽バランスの調整は、自分自身の体調をよく知らないと具体的かつ詳細な調整は難しいですが、冷えてきたら温める、熱がこもってきたら取るといった形で、中庸を目指すのが基本。 お助け食材で言うなら、熱を取ったりフワフワ気分を抑えたりして心身を沈静化させるには「菊花」を、胸苦しさや張るような痛みを取るには以前にも出てきた香りの良い「柑橘類」を、状態に応じて使いわけるだけでも、邪気にガツンと入られて好き放題されるようなことは起きないで済むはずです。
 人によっては花粉がツラい時期でもありますが、時間と体調が許せばお墓参りにも行ってみてください。外出が厳しければ仏壇にお参りでも、仏壇がなければ空に向かって手を合わせるだけでも良いです。先祖というのは自分のルーツ、手を合わせ近況報告をして感謝を伝えるだけでも、グッと地に足のついた感覚が強まります。
 さらなる陽気のあふれる季節に向けて、心身の陰陽、調整しておきましょう。

 (出典:日本中医食養学会編纂「食物性味表」改訂2版)