パンケーキ拡大写真

長谷川裕子

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diy cooking

小麦粉の蛋白価と空気含有量による食感の変化。あるいは、パンケーキ

 子供の頃、一番最初に自分で作れるようになったおやつはホットケーキでした。
市販のホットケーキミックスに卵と牛乳を入れて、よくかき混ぜてフライパンで焼くだけという簡単さ。
お母さんがおやつに焼いてくれるのを楽しみに待っていたホットケーキ。
クリスマスプレゼントで貰ったママレンジという玩具を使って自分で焼いたホットケーキは直径10㎝程度の小さなものでしたから、ガスコンロを使って大きなフライパンで大きく厚く焼ける時はちょっとした楽しみでした。
大きく丸く焼けたホットケーキをひっくり返してきれいなキツネ色になっていた時は、得意気に弟妹達に自慢していた覚えがあります。

 2枚組み調理器具写真  フライパン3本 ホットプレート 円形の型、大小6点

 ところでホットケーキもパンケーキも同じものだって知ってましたか?
フライパンや鉄板を使って焼いたケーキのことをパンケーキと呼ぶのです。
ここ数年、パンケーキの専門店が続々と開店して、クリームが渦高く乗っかったのや、分厚い円筒形のや、もちもちとしてフルーツやナッツのソースのかかったのや、スキレットに入ってフチがカリカリしてるのや、甘くないご飯の代わりになるのまで現れました。
いつのまにかママの焼いてくれるおやつのホットケーキは、お洒落なカフェで食べるパンケーキになり、更に進化してお家カフェのブランチメニューや朝食メニューの定番となりました。

 調理器具 ミキサー 泡立て器

 パンケーキとホットケーキの差別化に一役買ったキーワードに、「バターミルク」があります。
日本ではあまり販売されていないバターミルクは、お店で食べるパンケーキには必ずといって良いほど入っている材料です。
バターミルクとは文字通りバターを作る時に出来る副産物なのですが、実は最近はアメリカで販売されているバターミルクも本当のバターミルクでは無くなっているのです。
本物のバターミルクは牛乳や生クリームをチャーニング(撹拌)してバターを取りだした後に残る脂肪分の少ない液体なのですが、昔は牛乳や生クリームをチャーニングする前から発酵をはじめ、バターを取った後も発酵し凝固が進み風味が増したものでした。
19世紀になり遠心分離機の導入が進むと、バター作りの副産物としてスウィート(未発酵)バターミルクと呼ばれるものが得られるようになり、そのまま商品化されたり、乳酸菌を加えて発酵させ昔ながらの風味と形状にした商品が出回るようになりました。
第二次大戦直後は本物のバターミルクが不足して、現在流通しているバターミルクの原型のような、脱脂粉乳を発酵させ凝固させた模造品の「発酵バターミルク」が主流となりました。
ですからバターミルクが手に入らなくても、牛乳にプレーンヨーグルトを混ぜたものがあれば大丈夫です。
「ブルガリア・バターミルク」と呼ばれるバターミルクはまさにそうやって作るのですから。

 バターミルクは含まれている酸によりグルテンの網目構造を弱化し、レシチンなどの乳化作用で気泡とデンプンを安定化させ、パンケーキの焼き上がりをなめらかでキメの細かい柔らかく仕上げます。

発酵バターミルクの作り方 100g分

プレーンヨーグルト 30g
牛乳 70g

1.材料をよく混ぜる。
低脂肪乳を使っても良いと思います。

 材料 バター、卵、ココナッツオイル、吉野本葛、コーンスターチ、巣蜜、量り ほか

 簡単に美味しいパンケーキを作るのなら、好みの店の市販のパンケーキミックスを使うのも有効です。
でも理想のパンケーキがあるのなら、その配合を探してみるのも楽しいと思います。
もちもちとした食感のハワイアンパンケーキは、小麦粉だけでなくデンプンを混ぜてみると良いので、タピオカ粉やコーンスターチや米粉など好みのもちもち感の素になる材料を探してみましょう。

 メイプルシロップも美味しいですが、フルーツやナッツのソースも簡単に美味しく作れます。
お好みの100%果汁のジュースやシロップを使って、もちろん生のフルーツを使っても美味しく出来ます。
ソースらしいとろみをつけるにはくず粉やコーンスターチを使うと簡単です。
耐熱容器に入れて電子レンジで温めても良いですし、小さなお鍋で煮詰めても作れます。
生のフルーツをミキサーにかけて、好みでお砂糖や刻んだフルーツを足して煮詰めても良いです。
すぐに使うのでしたら、煮詰めたソースに生のフルーツを刻んで足しても、食感や香りの良いソースが出来上がります。
煮詰めただけではとろみの付きにくい材料には、くず粉やコーンスターチを足して、好みの濃度に仕上げましょう。
くず粉やコーンスターチは、シロップやジュースが冷たいうちによく混ぜて、加熱する時にもこまめにかき混ぜるのがなめらかなソースを作るコツです。

リリコイシロップソース

モナンパッションフルーツシロップ  100cc
コーンスターチ 小さじ1

1.材料を全て小さな鍋に入れてよく混ぜて極弱火に掛け、鍋底をヘラでこそげるように混ぜて、好みのとろみが付いたら耐熱容器に移し、表面が乾かないようにラップで覆う

ラップにくるまれたハニコムバター

ハニコムバター

無塩バター
巣蜜

1.無塩バターと同量の巣蜜をフードプロセッサーに入れてなめらかになるまでよく混ぜる。
2.ラップの上に棒状になるように置いて巻き、冷蔵庫で冷やし固める。
3.1cm程度にスライスしてパンケーキにのせて食べる。
スプーンで潰した巣蜜にクリーム状に柔らかくした無塩バターを合わせてよく混ぜても良い。

フルーツバター

好みのフルーツ(パイナップルやブルベリーなど少し酸味のあるものなら何でもお好みで)
無塩バター

1.無塩バターと同量のフルーツをフードプロセッサーに入れてなめらかになるまでよく混ぜる。
2.ラップの上に棒状になるように置いて巻き、冷蔵庫で冷やし固める。
3.1cm程度にスライスしてパンケーキにのせて食べる。

 粉の配合と焼き方、添えるソースやバターの組み合わせを換えるだけで、バリエーション豊富なのがパンケーキの良さでもあります。
小さなフライパンで作ると、同じサイズのパンケーキを簡単に作ることが出来ます。セルクルやミニスキレットを使っても面白い仕上がりになります。
すべて卵1個で作るレシピですので、色々作って食べ比べてみるのも良いでしょう。
卵を全卵のままで混ぜるところを卵白をメレンゲにしてふわふわとしたスフレタイプにしたり、バターを塗ったセルクルの中に生地を落として背の高い喫茶店風に焼き上げたり、たっぷりバターを溶かしたスキレットにタネを流し込んでオーブンで焼き上げてみたり。
共通するコツは、粉類は全て合わせて振るっておくこと、メレンゲ以外の液体は先に全てよく混ぜておいて、粉類を入れたら練らないようにさっくりとよく混ぜること。
パンを作る時には大切なグルテンですが、ケーキやクッキーなどの焼き菓子を作る時には失敗の原因になってしまいます。
一番簡単なグルテンを作らない方法は、蛋白価の低い小麦粉を使うことです。
超薄力粉を使ったり、小麦グルテンを含まない米粉をブレンドすることで、グルテンの生成を少なくして、ふんわりと柔らかいパンケーキを焼くことが出来ます。
米粉やタピオカ粉の分量は粉量の2割程度までがバランスが良いようです。

パンケーキ2枚組写真 右・メープルシロップのかかっているもの 左・かかっていないもの

ハワイアンパンケーキ

卵 1個
発酵バターミルク 160cc
塩 1g
グラニュー糖 15g
無塩バター 10g
薄力粉 100g
ベーキングパウダー 3g
ベーキングソーダ 1g

1.ボウルに卵、塩、グラニュー糖を加えて泡立て器で混ぜる。
2.1にバターミルクを加えて混ぜ、溶かしバターを加えて更に混ぜる。
3.2薄力粉、ベーキングパウダー、ベーキングソーダを合わせてふるい入れ、粉気が無くなるまで混ぜて5分程寝かせる。
4.フライパンを火にかけて熱してから濡れ布巾の上に置き、再び極弱火にかけて、3をレードルで高い位置から落として丸く広げて蓋をする。
5.気泡がぷつぷつと上がってきたらひっくり返し、蓋をして焼き色が付くまで焼く。
6.両面が焼けたら皿にとり、好みのバターとメープルシロップを添えて出来上がり。

別のパンケーキ2枚組写真 右・蜜のかかっているもの 左・かかっていないもの

お家で作るふっくらパンケーキ

卵 1個
グラニュー糖 20g
牛乳 60cc
ベーキングパウダー 3g
薄力粉 60g

1.ボウルに卵、グラニュー糖を入れて泡立て器で混ぜる。
2.1に牛乳を加えて更によく混ぜる。
3.2にベーキングパウダーを加え、薄力粉を加えて、粉気が無くなるまでよく混ぜる。
4.フライパンを火にかけて熱してから濡れ布巾の上に置き、再び極弱火にかけて、3をレードルで高い位置から落として丸く広げて蓋をする。
5.気泡がぷつぷつと上がってきたらひっくり返し、蓋をして焼き色が付くまで焼く。
6.両面が焼けたら皿にとり、好みのバターとメープルシロップを添えて出来上がり。

パンケーキ3枚組写真 左・白いハウピアソースのかかっていないもの 中・かかっているもの 右・パンケーキが覆われる程たくさんかかっているもの

ハウピアソースのもちもちパンケーキ

卵 1個
発酵バターミルク 80cc
塩 1g
グラニュー糖 7g
ベーキングパウダー 1g
薄力粉 50g
米粉 15g
発酵バター 5g

1.ボウルに卵と発酵バターミルク、塩、グラニュー糖、ベーキングパウダーを入れるつど泡立て器でよく混ぜる。
2.薄力粉と米粉を混ぜて振るい、1に加えて、粉気が無くなるまでよく混ぜる。
3.発酵バターを溶かして2に全体に行き渡るように混ぜる。
4.セルクルの内側にバターを塗っておく。
5.フライパンを火にかけて熱してから濡れ布巾の上に置き、再び極弱火にかけてセルクルを置き、中に生地を流し入れて、蓋をして10分焼く。
6.ふつふつと気泡があき周囲が固まってきたら、耐熱のグローブをして火傷に気を付けてひっくり返して蓋をして、5分~10分焼く。
7.火傷に気を付けながら指で表面を押して、弾力があれば焼き上がり。セルクルと生地の間にシフォンナイフなどを差し込んで外す。
8.皿に盛り、好みのバターとハウピアソースを添えて出来上がり。

ハウピアソース

ココナッツミルク 100cc
水 50cc
練乳 大さじ3
コーンスターチ 大さじ1

1.材料を全て小さな鍋に入れてよく混ぜて極弱火に掛け、鍋底をヘラでこそげるように混ぜて、好みのとろみが付いたら耐熱容器に移し、表面が乾かないようにラップで覆う。
水を同量の牛乳に替えても美味しいです。甘めが好きならお砂糖か練乳を増やしてください。
ココナッツミルクの他にアーモンドミルクやナッツを牛乳と一緒にミキサーにかけたもので作っても美味しいです。

パンケーキ2枚組写真 左・ブルーベリーソースのかかっていないもの 右・たくさんかかっているもの

ブルーベリーソースのブルーベリーパンケーキ

薄力粉 90g
ベーキングパウダー 2.5g
卵 1個
グラニュー糖 25g
塩 3g
発酵バターミルク 120cc
溶かしバター 25g
バニラオイル 数滴
生ブルーベリー お好みで
ブルーベリーソース お好みで

1.薄力粉とベーキングパウダーをあわせて振るっておく。
2.ボウルに卵、グラニュー糖、塩、発酵バターミルク、溶かしバターの順で合わせて泡立て器でよく混ぜる。
3.2に1をあわせて泡立て器で粉気がなくなる程度に混ぜ合わせる。
4.フライパンを火にかけて熱してから濡れ布巾の上に置き、再び極弱火にかけてバターを溶かし(分量外)、3をレードルで高い位置から落として丸く広げる。
5.気泡がぷつぷつと上がってきたら、生のブルーベリーを入れる。
6.焼き色が付いたらひっくり返し、両面が焼けたら皿にとりブルーベリーソースをかけて出来上がり。

前のものより厚みのあるパンケーキ2枚組写真 左・ブルーベリーソースのかかっていないもの 右・かかっているもの

セルクルを使った焼き方

材料は同じ

1~3までの手順は同じ。
4.セルクルの内側にバターを塗っておく。
5.フライパンを火にかけて熱してから濡れ布巾の上に置き、再び極弱火にかけてセルクルを置き、中に生地を流し入れブルーベリーを入れて、蓋をして10分焼く。
6.ふつふつと気泡があき周囲が固まってきたら、耐熱のグローブをして火傷に気を付けてひっくり返して蓋をして、5分~10分焼く。
7.火傷に気を付けながら指で表面を押して、弾力があれば焼き上がり。セルクルと生地の間にシフォンナイフなどを差し込んで外す。
8.皿に盛り、ブルーベリーソースを添えて出来上がり。

フレッシュブルーベリーソース

生のブルーベリー 1カップ
ブルーベリージュース(無ければグレープジュース) 100cc
コーンスターチ 小さじ1

1.生のブルーベリーを半分はミキサーでピューレにしてジュースと合わせ、コーンスターチを加えてよく混ぜる。
2.小さな鍋に入れて極弱火に掛け、鍋底をヘラでこそげるように混ぜる。
3.ふつふつと沸騰してとろみが付いてきたら、残りのブルーベリーの半量を混ぜて、更に加熱しながら混ぜる。
4.好みのとろみが付いたら残りのブルベリーを加えて、耐熱容器に移し、表面が乾かないようにラップで覆う。

2枚組写真 喫茶店風パンケーキ 左・シロップのかかっていないもの 右・かかっているもの

エッジの立った喫茶店風パンケーキ

卵 1個
砂糖 15g
蜂蜜 15g
発酵バターミルク 110cc
溶かした無塩バター 20g
薄力粉 110g
ベーキングパウダー 小さじ1
型用バター 適量
トッピングバター お好みのものを適量

1.セルクルの内側にバターを塗っておく。
2.薄力粉とベーキングパウダーをあわせて振るっておく。
3.卵、砂糖、蜂蜜、発酵バターミルク、溶かした無塩バターを順番にボウルに入れて、そのつど泡立て器でよく混ぜる。
4.3のボウルに2の粉類を一度に入れて、粉気が無くなるまでよく混ぜる。
5.フライパンを火にかけて熱してから濡れ布巾の上に置き、再び極弱火にかけてセルクルを置き、中に生地を流し入れ、蓋をして15分焼く。
6.ふつふつと気泡があき周囲が固まってきたら、耐熱のグローブをして火傷に気を付けてひっくり返して蓋をして、5分~10分焼く。
7.火傷に気を付けながら指で表面を押して、弾力があれば焼き上がり。セルクルと生地の間にシフォンナイフなどを差し込んで外す。
8.皿に盛り、好みのバターやシロップ、ソースを添えて出来上がり。

2枚組写真 フライパンに入ったリコッタスフレパンケーキ
 左・シロップのかかっていないもの 右・シロップをかけている写真

リコッタスフレパンケーキ 5インチスキレット2枚分(6.5インチ1枚分)

リコッタチーズ 80g
卵黄 1個分
発酵バターミルク 50cc
薄力粉 40g
ベーキングパウダー 1g
卵白 1個分
バター 30g
粉糖 適量
ハニコムバター 適量

1.ボウルにリコッタチーズ、卵黄、発酵バターミルクを入れてよく混ぜる。
2.薄力粉とベーキングパウダーをあわせて振るっておく。
3.2に1を加えて軽く混ぜる。
4.卵白を角が立つまで泡立てる。
5.3に4をあわせて、卵白の泡を消さないように軽く混ぜる。
6.ミニスキレットを火にかけ、分量のバターを溶かし、5を流し込む。
7.230度に温めたオーブンに入れて5分~10分焦がさないように焼く。
8.粉砂糖を振りかけ、好みでハニコムバターとメイプルシロップを添えて出来上がり。

 きれいな焼き色をつける火加減の調節が難しければ、ホットプレートを使うと良いでしょう。
裏面が平らなフライパンならホットプレートの上に置いて同じサイズの丸いパンケーキを簡単に作る事が出来ます。
その際は熱伝導率を高めるために、ホットプレートとフライパンの間にサラダオイルを敷きます。
きれいなメイラード反応のためには、フライパン表面の余分な油を拭き取ることが肝心です。
お気に入りの配合と組み合わせを見付けてください。

 次回は、「ゲル化と透明度と弾力。あるいは、水信玄餅」の予定です。